テレビっ子だった子供の頃、「なんで時代劇とニュース番組は雰囲気が違うんだろう?」と思っていました。
その違いは「フィルムかビデオか」であると、映像の業界に飛び込んで初めて知りました。
当時はフィルムからビデオへの移行期で
フィルムで撮影>F-T(Film to Tape)>ビデオ編集か、
ビデオで撮影>ビデオ編集のいずれかでしたが
映像の質感として「フィルムの方がリッチである」という理由から
特にTVCMはフィルム撮影が主流の時代が長く続きました。
しかしフィルム撮影はコストが高いので、ビデオ撮影した素材を編集の処理でなんとかフィルムっぽい質感にできないか?と求められる仕事が増えていきました。
2011年の地デジ化を境とした前後数年の話です。
明るさの表現や発色の表現、フィルム独自の粒状性ノイズを合成するなど
見た目になんとなく近づけるテクニックが発明されていきますが
そもそもの情報量が違うので同じ質感にはなりきれないもので、結果画質を落としてしまうリスクとの戦いでした。
そんな数あるテクニックの中でも、極めて有効なのが「コマ数を減らす」という手法です。
ビデオは基本、1秒間30コマの静止画で構成されていますが、フィルムは24コマが基本です。
この6コマの差がフィルムらしさとビデオらしさを分けるポイントでした。
テレビっ子だったあの頃に感じた雰囲気の違いは、このコマ数の差であることを知った時
「映像はコマ数によって時代との距離を表現できるメディア」だと感じました。
コマ数が多いほど、現在に近づく。30コマのニュース番組はまさに「今」を伝えるメディア。
コマ数が少ないほど、現在から遠ざかる。24コマの時代劇は過去を表現するのにちょうどいい。
歴史資料も過去に遡るほど映像>写真>絵と、イメージの情報量が少なくなっていきます。
コマとしての情報量の違いが時間や時代に対するイメージに直結するんだと思います。
最近のTVモニターは「コマ数が多いことはクオリティが高いこと」として
あらゆるコマ数のコンテンツを60コマに変換してしまう機能が搭載されているものが多いです。
見た目は滑らかになるけれど、制作者が意図した「時間軸の表現」を簡単に潰してしまう機能でもあります。
映像は見る人の位置からの時間的距離感も表現できるんです。
60コマで見る映画はビデオを超えて内容が自分のすぐそばまでやってくる感じがして、好きになれないなぁ。
山田 (・ω・)ノ