私が卒業した高校は、高校としては珍しく3年生に卒論を書かせる高校でした。
卒論のテーマとして選んだのは「アンネ・フランクの生涯と反ユダヤ主義」。
「アンネの日記」で有名なアンネ・フランクの生涯を辿りながら
ナチス・ドイツのユダヤ人迫害についての研究をまとめたものでした。
卒論のために第二次世界大戦中のナチス・ドイツに関する本を多く読み漁る中
ヨーゼフ・ゲッベルスという「宣伝指導者」の存在を知りました。
今で言うコピーライターとかクリエイティブディレクターのような振る舞いで
ナチス・ドイツのプロパガンダを一気に広め
私たちが知っているヒットラー像もゲッベルスが作り上げたと言っていいほどの優れた広告クリエイターでした。
私が映像の世界で生きていくことを決める前に
広告宣伝というものを強く意識したのは、このゲッベルスを知った時だったと思います。
ゲッベルスのプロパガンダによってドイツ労働者党は強くなり
ナチスの反ユダヤ主義は暴走を極め、ホロコーストという史上最悪の組織的殺戮行為に繋がっていきます。
広告宣伝の力で、600万人ものユダヤ人の命を奪ってしまえる。
高校生の自分にとっては広告宣伝の持つ力に恐怖感を覚えながらも
人の心をここまで動かしてしまう影響力に非常に興味が湧きました。
映像の仕事をするようになり、TVCMをはじめとした広告映像に携わる時
気持ちのどこかでゲッベルスのことを思っていて
「これはとんでもなく影響力のあるものを扱っている」と意識しながら仕事をしてきました。
大きな力は扱い方ひとつで、人の命を奪ったり人を幸せにしたりできる。
自分は後者に仕事として関わらせてもらえているんだから、幸せなことだなぁと思います。
ゲッベルスはヒトラーの遺言で首相になるものの
遺言を拒否し、死ぬことでヒトラーの部下であり続けることを選び
6人の子供と妻と共に無理心中をします。
私が読んだゲッベルスの本の最後に、焼かれたゲッベルスの遺体の写真があり衝撃的でした。
仰向けで黒焦げのゲッベルスの遺体は、左手を空に向かって突き出し、何かを掴もうとしている。
そのポーズからはまだ「何かをやろう」という意志が強く伝わってきて
脳裏に焼き付き、忘れることができません。
自分の死ぬ姿までも人にイメージを焼き付かせるヨーゼフ・ゲッベルスという男は
広告クリエイターとして人類最強だったのかもしれません。
山田 (・ω・)ノ