現在、「ピクサーのひみつ展」が大阪・グランフロントで開催されています。
会社から徒歩圏内でピクサーのひみつに触れられるならば!と足を運びました。
「CGで映画を作るとはどういうことか?」ということを
子供から大人まで幅広い世代が知ることのできる素晴らしい内容。
しかしCGスタジオを経営する立場としては、違う視点で勉強になりました。
ピクサーのスタッフから見えたもの。
会場の所々にあるモニターのボタンを押すと
ピクサーで働く様々なスタッフが自分の仕事について語り始めます。
CGプロダクションならではの「あるある」にもすごく共感できるし
どのスタッフも自分の役割と仕事に誇りを持っていて、とにかく楽しそう。
数多くあるモニターのボタンを押して周り、あることに気が付きました。
ピクサーのスタッフは、圧倒的にシングルタスクでミッションをこなしている。
ということ。
素晴らしき能力。感じる違和感。
マルチタスク能力の高さが優秀とされる職種や人は沢山います。
そのことをテーマにしたビジネス書もたくさん出版されているし
実際、自分もそれらの本を読み漁った1人なんです。
マルチタスク能力は決して悪いことではなく、素晴らしい能力だと思います。
でも、ちょっと違和感がある。
誰でもマルチタスクでちゃんと仕事できるのかな?と。
あらゆる仕事の場面において、「立ち上げ時間」は必ず存在します。
車の暖機運転みたいなもので、段取りや感覚が良い感じに暖まってきたところで
一番良いパフォーマンスで仕事ができる。
ところが、マルチタスクで仕事を次々とこなす場合、この熱量を無視して次の暖機運転に移る必要があり
結果、前のタスクに戻るとまた暖機運転から始めることになってしまう。
この繰り返しはかなり非効率的ではないか?というのが私の感じる違和感の正体なんです。
苛立ちを如何に抑えられるか。
マルチタスク能力とは、非効率なのに効率的にこなせる能力のことを指すのだとすれば
それはもはや神レベルですね。
でも非効率なものを効率良くするなんて、どちらかと言えば根性論に近くて
「作業に集中できない苛立ちを如何に抑えられるか」ってことをマルチタスク能力と呼ぶんじゃないかと考えています。
シングルタスクとは?
仕事には立ち上げ時間が必要。マルチタスクは毎回立ち上げが必要で時間も浪費し精神的疲労度が上がる。
これを集団の個々がやっていたとしたら。
無駄な時間やエネルギーの総量はとんでもないものになるでしょう。
一発の暖機運転から走り続けられるシングルタスクの方が圧倒的に仕事密度は上がるので、
時間にロスがなく生産性が上がる。
マルチタスクに関する本を読む中で感じた違和感の結果、自分的に到達した考え方です。
ピクサーのスタッフの個々の仕事ぶりを見て、この考え方がより補強されました。
しかしこれはあくまでも個人の話で、
チームビルディングによって作品を生み出す環境までシングルタスクだと全く意味を成さないのです。
ピクサーのひみつ。
圧倒的なシングルタスクでミッションをこなすスタッフ。そのスタッフをマルチタスクでまとめるピクサーという環境。
この関係性が、数々の素晴らしい映画を生み出し続けているひみつ。
マルチタスクとシングルタスクの適正配分もクオリティ爆上げ要素のひとつだと学びつつ、
間もなく新しい年を迎えようとしています。
令和元年、お世話になった皆さまありがとうございました。
新年もどうぞT601をご贔屓に。
山田(・ω・)ノ